Analysis & Evaluation SectionCase Study
事例紹介リチウムイオン電池分野-3
市販リチウムイオン電池の高温保存試験
数mAh~数Ahのリチウムイオン電池について、
各種特性試験(充放電特性、サイクル特性、温度特性、安全性etc.)が可能。
各種特性試験(充放電特性、サイクル特性、温度特性、安全性etc.)が可能。
セル構成&試験概要
- 試験セル
市販リチウムイオン電池(900mAh)
(正極:LCO、負極:水系グラファイト、セパレータ:PE) - 試験条件
①容量確認試験
● 常温でCC(1C)‐CV充電、0.2C放電にて、充放電容量を確認した。
②高温保存試験
● 常温でCC(1C)‐CV充電を実施し、満充電後85℃環境に96時間保存した。
● セルを常温下に戻し、常温で0.2C放電を実施し、保存容量を確認した。

試験結果
セルNo. | 1 | 2 | 3 |
---|---|---|---|
試験前厚み(mm) | 5.61 | 5.88 | 5.97 |
試験後厚み(mm) | 6.74 | 6.51 | 6.50 |
安全弁解放後厚み(mm) | 6.22 | 6.17 | 6.20 |
試験前容量(mAh) | 834 | 820 | 810 |
試験後容量(mAh) | 732 | 715 | 707 |
保存容量(%) | 87.8 | 87.2 | 87.3 |
高温保存試験前後の放電カーブ

解体結果

- 高温保存後、セル厚みの増加と容量の低下が確認された事から、セル内部で副反応が生じたと考えられる。
- 安全弁解放後にセル厚みが減少した事から、内部でガスが発生したと考えられる。
- セル解体の結果、負極、セパレータに変色が見られた。
各種電池特性試験や安全性試験にも対応します。
クライオシステムを用いた高温保存試験後のセパレータ断面解析
熱による変質が生じる試料について、冷却断面加工により
適切な断面を得る事が可能。
適切な断面を得る事が可能。
前処理方法
Ar雰囲気中で電池より取り出したPE製セパレータを溶剤洗浄後、大気中で失活させ、クライオ断面加工、SEM観察を行った。
未試験セパレータの常温加工断面SEM観察結果

未試験セパレータのクライオ加工断面SEM観察結果

高温保存試験後セパレータのクライオ加工断面SEM観察結果

- 未試験セパレータをクライオを用いずに加工した結果、セパレータが溶融した。
- クライオを用いて未試験と高温保存試験後を比較した結果、試験後において堆積物の付着に伴う空隙の減少が確認された。
クライオシステムにより、熱変質し易い材料の断面加工、観察が可能です。
大気非暴露FE‐SEMを用いた高温保存試験後の負極解析
大気非暴露雰囲気で、
表面及び断面のSEM観察、EDXによる元素分析が可能。
表面及び断面のSEM観察、EDXによる元素分析が可能。
負極表面のSEM観察結果

負極イオンミリング断面のSEM観察結果

高温保存試験後負極表面のSEM/EDXマッピング分析結果

- 高温保存試験後の負極表面に粒状析出物が確認された。粒状析出物は非常に小さく断面SEM観察では捉えられなかった。
- EDXマッピングにて高温保存試験後の表面にCOの分布やF、P等の偏析が確認されたが、粒状析出物の同定には至らなかった。
SEM/EDXはμmオーダーの対象物の観察、元素分析に有効です。
大気非暴露STEM/EDX/EELSを用いた高温保存試験後の負極解析
大気非暴露雰囲気下でナノレベルの観察、
およびLiを含む元素分析が可能。
およびLiを含む元素分析が可能。
STEM観察&EDX分析結果

- 高温保存によってSEI層が厚く成長しており、SEI層の一部に結晶性の領域が確認された。
- 未試験のSEI層には,電解質との反応物由来のC、O、F、Pが確認された。
また、高温保存試験後には上記元素に加え、正極から溶出したCoの偏析が確認された。 - EELS分析の結果、未試験,高温保存試験後いずれも、SEI層内にLiが存在した。
また高温保存試験後では、Coとグラファイトの間にLiの偏析が伺えた。
STEM/EDX/EELSは局所の構造解析に優れ、Liの分析も可能です。